日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の想定を加えた八戸市津波避難計画を受け、市は20日、障害や介護認定を受けている避難行動要支援者と、避難困難地域の住民が車で避難する際のルール案を初めて明らかにした。新井田川や馬淵川にかかる橋を避けて、近くの避難所ではなく、浸水域から遠い近隣自治体を目標とすることが柱。避難ルールを明確化し、浸透させることで、津波からの犠牲者ゼロを目指す考えだ。
巨大地震の想定で2022年11月に改定された津波避難計画では、津波到達時間を基に洗い出した避難困難地域が大幅に拡大。市は浸水区域の全住民が避難できる態勢を目指して、本年度から車避難のルール作りを本格化させた。
市は避難困難区域について、実際の避難路や居住実態などの精査を行い、車の避難が必要な対象エリアを細かく絞り込んだ。その上で、車に頼らざるを得ない要介護度3~5などの避難行動要支援者を加えて、自動車避難のシミュレーションを行った。
この結果、渋滞を避けるために国道や県道、主要な市道を利用することや、避難所を分散するために、より標高の高い近隣自治体へ逃げるルールを設定。新井田川や馬淵川にかかる橋を渡らないように、馬淵川北側の市川など4地区は五戸町、両河川の間に位置する小中野など5地区は南郷と南部町、新井田川東側の鮫など4地区は階上町内陸部を目指すこととした。
一方、避難困難区域の中には車を使用しても、全住民の避難が難しい地区があるという。これらの地区については、今後新たな津波避難施設の計画が示される見込みだ。
地区説明会は同日、鮫地区を皮切りにスタート。鮫公民館には町内会長ら23人が集まり、市側の説明を聞いた。同地区における避難困難区域の住民は絞り込みの結果ゼロとなり、車避難の対象は避難行動要支援者のみで236人となった。
参加者からは「対象でなくても車で逃げたくなるのでは」「将来も考えて、対象者を考えてはどうか」などの質問が上がった。
市は「具体的な避難のエリアを考慮すると、避難困難区域がかなり縮小することが分かった。検討した自動車避難のルールについて説明していきたい」と話している。地区説明会は12月まで鮫を含む計13地区で実施。来年3月までに自動車避難のルールを含む「津波避難施設の整備等に関する基本方針」を策定する。
【写真説明】
自動車避難のルールについて示された地区説明会=20日、八戸市立鮫公民館