能登半島地震、南海トラフ、台風、線状降水帯…。近年、全国各地で自然災害が多発する中、その脅威に備えようと、北奥羽地方で防災への関心が高まっている。講演会やセミナーへの参加者が増えていることに加え、防災用品の売り上げも急伸し、専用の売り場を設ける店舗も出てきた。一方、何から取り組めばいいのか悩む市民も多い。専門家は「地域でどのような被害が出るかを確認し、自分たちにとって何が必要かを考えてほしい」と呼びかける。
国内では近年、大規模な災害が頻発。特に今年は元日から能登半島地震が発生し、2011年の東日本大震災を知る北奥羽地方の住民にかつての苦難を想起させた。さらに、8月には台風が相次いで襲来。普段と違う北東北への直撃コースを取った台風10号は、土砂災害や水害に関する脅威を改めて知らしめた。
線状降水帯や南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)などにも敏感に反応し、住民は災害への備えを加速させている。八戸市危機管理課などによると、防災訓練を実施する自主防災会や町内会が例年に比べて増え、防災士講座や各種セミナーの受講者も増加傾向だという。
防災関連用品への関心も高い。東北地方でホームセンターなどを展開するサンデー(同市)では、防災用品の売れ行きが伸び、現在はほぼ全店で専用の売り場を設ける。
3月にコーナーを常設した長苗代店では、断水で避難所生活がままならなかった能登半島地震なども教訓に、ウオータータンクや携帯用トイレなど、避難先で使える商品を求める客が増えた。担当者は「商品の供給を続けながら、防災に関する情報も伝えていきたい」とアピールする。
一方で、市民の中には「災害に備えなければならないのは分かるが、何を最初にすればいいのか」と話す人もいる。
防災士で八戸学院大地域経営学科の井上丹准教授は「災害が起きる前に、まずは自分が住む地域でどのような被害が出るかを確認してほしい」と提言。自治体が発表する各種災害のハザードマップには、危険エリアや各地域の避難場所などが明記されているため、防災を考える第一歩になる。
その上で家族や職場の同僚らと話し合って、非常用持ち出し袋を準備したり、事前に行動指針や確認事項を順序立てて記しておく住民一人一人の防災行動計画(マイ・タイムライン)を作成したりしておくのも、身を助ける重要な備えになるという。
井上准教授は「災害はいつ起きてもおかしくない。天気予報や災害情報を通知するアプリなども導入し、軽くでもいいので常に災害を意識するようにしてほしい」と訴える。
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