NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台にもなった久慈市小袖地区。東日本大震災では住民1人が犠牲となり、沿岸は津波で甚大な被害を受けた。あの日から14年。地区の小学生27人は全員が震災後の生まれとなった。3・11を知らない世代に、節目の日にどう防災意識を高めてもらえばいいか―。防災士の資格を持つ市立小袖小の小室好司校長は試行錯誤し、地域住民も巻き込んだ実践的な防災集会を初めて企画した。
小袖地区は集落の大半が高台にあるが、坂を下った海岸では「北限の海女」が活動。夏場には多くの観光客が訪れ、子どもたちもハマに下りて海水浴を楽しむ。
震災時は、市街地から同地区へ海沿いを車で移動中だった住民が津波に流されて犠牲となり、2010年に完成したばかりの観光施設が全壊。大小約100隻の漁船も被災した。
同校ではこれまで、被害の振り返りや犠牲者への黙とうなど防災教育を実施してきた。昨年4月に赴任した小室校長は、発災時、より実践的に行動できる資質を養ってもらおう―と、1時間半の防災集会を開催。児童が講話や避難所開設体験を通じ、地域住民と共に災害への備えを学んだ。
講話では、小室校長が津波発生の仕組みなどを解説。「(小袖地区で多くの犠牲が出た)明治三陸津波のように、陸地の揺れが大きくなくても津波は起こり得る」と注意を喚起した。
避難所開設では、児童を含む40人が2グループに分かれ、市から借りた室内用簡易テントや段ボールベッドを組み立てた後、リーダー、受け付け、誘導など役割を分担。協力し合いながら、避難者受け入れの流れを体験した。
6年川尻龍成さんは「テント設営は簡単だったが、誘導やさまざまな事情を抱える避難者対応が難しい」と反省点を挙げ、「避難所ができることがあれば力になりたい」と気持ちを引き締めた。一緒に作業した地元の大向きみ子さんは「理解力がすごい。テントの組み立て方は有事の参考になった」と、児童の頼もしさに感心していた。
小室校長は真剣に取り組む児童の姿に目を細め、「うまくできていない部分もあったが、今回の経験は将来に生きてくるはずだ」と期待を寄せていた。
【写真説明】
室内用簡易テントの組み立てや避難所開設シミュレーションなどに挑戦した小袖小児童ら=11日午前11時ごろ、久慈市