【震災13年・備える】伝承、発信にも力入れる/達増知事インタビュー

【震災13年・備える】伝承、発信にも力入れる/達増知事インタビュー

 岩手県の達増拓也知事は、東日本大震災から13年を迎えるのを前に、県庁で本紙などのインタビューに応じた。復興への取り組みとして、被災者の心のケアや日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震に備えた防災・減災対策を進める意向を示したほか、震災の伝承と発信に力を入れる考えを強調した。

 ―震災から13年がたつ。
 犠牲の多さ、被害の大きさは忘れられるものではなく、そこを原点に復興に取り組まなければならない。
 復興道路や津波防災施設は整備され、災害に強い新たな道路ネットワークも構築された。一方、被災者一人一人の状況に応じた支援や、なりわいの再生、巨大地震に備えて防災・減災対策を進める必要がある。
 ▽安全の確保▽生活の再建▽なりわいの再生―の復興の柱それぞれに新しい課題があり、4本目として、伝承と発信にも力を入れていかなければならない。

 ―復興事業の課題は。
 未完成の社会資本を早く整備する。被災者に寄り添った心のケアなど、復興固有の課題にも取り組まなければならない。能登半島地震もあり、岩手としても震災の伝承と発信に力を入れなければならない局面だ。
 国には、期限を区切って復興を機械的に終わらせるのではなく、心のケアや被災地のコミュニティー形成支援など必要な事業は、現場の状況や被災地の意見を十分踏まえて継続し、予算を確保してもらいたい。

 ―コミュニティー形成に関する教訓は。
 震災当時を思い出すと、仮設住宅に早く入居してもらうため、抽選で入る人を決めた。元々のコミュニティーが分断されてしまい、地域の結束力が弱くなったり、高齢者の孤立化につながった面もあると思う。これからは、元々のコミュニティーの維持にも配慮した対応が大事だ。

 ―能登半島地震を踏まえて防災を見直す考えは。
 最新の大規模災害は、他の地域にも重要な経験・教訓になる。防災計画については、必要であれば毎年度末に改正案を県防災会議に諮っている。そういうことは今後あるかもしれない。

 ―能登半島地震のような直下型地震への対応は。
 道路も住宅地も元通りに復旧・復興させるのが難しいほどに地形が変化した場合への対応は、今まであまり検討していなかったと思う。今後出てくる専門家の知見も参考に、必要に応じて防災計画や関連マニュアルを変更しなければならない。

【写真説明】

東日本大震災の伝承と発信に力を入れる考えを示す達増拓也知事=2月中旬、岩手県庁
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