八戸市は2日、同市沼館4丁目の市津波防災センターで市民防災研修会を開催した。東日本大震災で被災した岩手県大槌町の伊藤正治さんが講師を務め、同市など八戸圏域8市町村の参加者約100人が、地域コミュニティーの重要性や、被災体験を語り継ぐ大切さに理解を深めた。
大槌町では、災害関連死と行方不明者を含め、人口の1割近くに当たる1286人(2024年12月末現在)が犠牲となった。当時、町教育長だった伊藤さんは、災害対策本部の業務に当たっていた旧役場庁舎内で津波に襲われ、屋根裏のわずかな空間に逃げ込んで九死に一生を得た。
町長をはじめ多くの町職員が亡くなり、人員も物資も不足する中で膨大な量の業務に追われた。特につらかった業務に遺体の収容・安置を挙げ、「冷たい床に寝かせ、顔の泥をぬぐうことしかできなかった」と悔しさをにじませた。
大きな被害が生じた要因として、住民に「大丈夫だろう」という思い込みがあったことなどを指摘。「防災には地域で声をかけ合う“近助(きんじょ)”が重要で、日頃の活動を通じた関係づくりが欠かせない」と訴えた。
【写真説明】
講演で被災の体験談を語る伊藤正治さん