酷寒「備えが重要」 住民震えた能登半島地震/冬の避難所

酷寒「備えが重要」 住民震えた能登半島地震/冬の避難所

真冬に発生した能登半島地震では、避難所で住民が寒さに震えた。灯油ストーブなどを備蓄する自治体は多いが、能登半島の避難所では灯油が尽きたり、エアコンが壊れたりといった事態に直面した。2011年の東日本大震災を経験した自治体の担当者や識者は、避難所運営訓練などの備えが重要と強調。過酷な寒さを体験し、備蓄や持ち物を再点検する姿勢が求められている。

 ▽灯油切れ
 石川県輪島市の漁師逢坂伸春さん(70)は1月1日、小学校に避難したが、エアコンは地震で壊れて使えなかった。自宅に戻って暖房器具や布団などを避難所に運び、寒さをしのいだ。「避難所の備蓄だけでは暖が取れない。壊れかけた自宅から物を取り出してくるのは緊張した」

 液状化被害の激しい同県内灘町の鍛原恵夫さん(77)は、避難所の寒さに耐えられず、傾いた自宅に戻った。「布団のない体育館の床は硬くて冷たかった。背中は痛いし、寒くて眠れない」

 土砂崩れなどで地区が孤立、輪島市の公民館で過ごした片山俊子さん(74)は「近所の人たちが持ち寄った灯油を使い、石油ストーブで何とか寒さを耐えた」と振り返る。1月11日に灯油が切れかけ、片山さんは翌12日にヘリで救助された。

 ▽負 担
 こうした事態も想定し、共同通信の自治体調査では、北海道別海町や青森県むつ市、福島県相馬市などが冬に備えてストーブや非常用発電機などを備えているとした。

 北海道豊浦町はカイロを避難所全てに備蓄、床からの冷気を防ぐ段ボールベッドも段階的に整備している。岩手県大槌町や宮城県塩釜市は毛布などを備蓄している。

 一方で、冬に避難所運営訓練をする自治体は少ない。

 「冬の訓練は職員や参加者の負担が大きい」。こう指摘する北海道福島町の担当者は「能登半島地震の状況から必要だとは思うが、ノウハウがない」と語る。

 つがる市の担当者も「高齢者が多く、寒くて外出したくないなどの理由で参加率が下がるのでは」と説明する。

 ▽被災経験
 「通常(冬以外)の訓練で対応可能」という自治体もあり、危機管理に詳しい上武大の加古嘉信教授(災害対策)は「冬の訓練の必要性すら認識していないのは驚きだ」と指摘する。

 東日本大震災を経験した岩手県宮古市は冬の避難所運営訓練を実施している。市民の声を反映した避難所運営マニュアルはストーブの設置など冬の対応も盛り込んだ。担当者は「3月に被災した経験から、寒さ対策は重要と言える」。

 能登半島地震の被災地を回った加古教授は「訓練の実施自治体も、参加人数が十分か、実践的な内容だったかなど課題を探るべきだ。地域で問題意識を共有してほしい」と指摘した。

【写真説明】

主な冬の避難所運営の工夫
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