災害時の代替路、整備に課題 久慈・市道二子小袖沢線

災害時の代替路、整備に課題 久慈・市道二子小袖沢線

 久慈市が災害時の県道の代替道路として拡幅などの改良工事を進める市道二子小袖沢線(延長約6・5キロ)の整備に、課題が横たわっている。未着手区間の大部分が、地権者の境界が画定されていない「筆界未定地」を通り、用地取得が容易でない状況だ。いつ訪れるか分からない災害。地域住民からは「避難路としても必要。全線を早期に拡張してほしい」との声が上がっている。

 この市道は、同市二子地区付近から高台を通って三崎地区付近に至る。かつては公衆用道路だったが、地域の要望を受けて40年以上前に市道に認定された。途中の高台にある平沢地区には総合運動場があり、市の防災拠点の一つとなっている。

 海沿いには並行して県道野田長内線が走っているが、入り組んだ岩場を縫うように通る道路は狭あいでカーブも多く、交通上の難所として知られる。

 市によると、市道は30年以上前から道路改良が始まり、小袖沢側から約1・4キロは拡幅・舗装が終了。現在は館石地区の450メートルの区間で幅員5メートルへと拡幅が進んでおり、本年度中に終了予定。2024年度以降に約250メートルの区間を拡幅する計画だ。

 残る約3キロ以上の区間は、大部分が幅員4メートル程度の未舗装路。拡幅には複数の地権者がかかわる筆界未定地の課題をクリアして用地を取得する必要が出てくる。市建設部は「地権者の皆さんで話し合って境界を画定させてもらいたいが、事業実施に当たっては市としても(測量などで)協力できることはありそうだ」と話す。

 市道は東日本大震災当時、津波の影響で通行止めとなった県道の代替路として住民の移動や復興で利用された実績もあるという。

 日本海溝・千島海溝沿いを震源とする最大クラスの地震津波想定で、岩手県内最大の人的被害が見込まれる同市。市道改良の見通しについて、遠藤譲一市長は23年12月の市議会定例会議一般質問で「県道の代替道路として重要な路線」との認識を示した。「多額の事業費が見込まれる。未改良区間は津波避難対策緊急事業など有利な財源での事業実施の可能性を検討していく」と答弁し、理解を求めた。

【写真説明】

本年度内の終了に向けて拡幅工事が行われている市道二子小袖沢線の館石地区付近=2023年12月、久慈市
記事一覧に戻る