東通原発事故を想定、県が訓練 屋内退避対象者の交通規制、初の実施

東通原発事故を想定、県が訓練 屋内退避対象者の交通規制、初の実施

 青森県は9日、東通村などで東北電力東通原発の重大事故を想定した原子力防災訓練を行った。原発近くの住民の円滑な避難に向け、屋内退避対象者への交通規制を初めて実施。事故時には、原発からの距離に関係なく住民が一斉に避難を始めるなどの混乱も予想されるため、実効性の確保が課題になる。視察した宮下宗一郎知事は「国の考え方と地域の感じ方にギャップがある。実際に動かして考えたことを国に伝えていきたい」と述べた。

 訓練は県東方沖の地震で、東通原発の外部電源が喪失し、原子炉を冷やせなくなり、放射性物質が放出。土砂崩れで尻労地区が孤立した―との想定で実施。約1100人が参加した。

 国の指針では、重大事故発生時に、原発から5キロ圏内の「予防防護措置区域」(PAZ)は即時避難し、5~30キロ圏内の「緊急防護措置区域」(UPZ)は屋内退避が基本とされる。2022年12月時点で、村内のPAZ対象者は小田野沢、老部、白糠の3地区で計2385人、UPZは計3549人。

 交通規制訓練では、小田野沢地区の避難道となる、むつ市方面の国道338号への流入を防ぐため、砂子又駐在所前の交差点にパトカーを配置。駐在所の警察官が、国道に合流しようとする車両に、自宅で待機するよう促した。

 屋内退避を巡っては、今年1月の能登半島地震で北陸電力志賀原発(石川県)周辺で家屋の倒壊や集落の孤立が相次いだため、国が運用の見直しを進めている。また、屋内退避に法的拘束力はなく、住民への適切な周知も必要となる。

 宮下知事は「避難者を止め、家に戻ってというのが現実的な対応なのか考えないといけない。逃げたいのが住民感情なので理解促進を図りたい」と話した。

 訓練ではこのほか、陸上自衛隊のヘリコプターによる、孤立した尻労地区住民の救助も実施。坂本昭義部落会長は「大きな混乱もなく避難できた。地区住民にこの経験を伝え、万が一に備えたい」と話した。

【写真説明】

国道に合流しようとする車両に自宅待機を促す警察官=9日、東通村

 

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