【震災13年・備える】訓練重ねる自主防災組織 進む高齢化、担い手どう確保

【震災13年・備える】訓練重ねる自主防災組織 進む高齢化、担い手どう確保

能登半島地震では、2011年の東日本大震災以来となる大津波警報が発表された。沿岸部では普段の訓練が生かされ、迅速に避難できたケースが確認されている。北奥羽地方の自主防災組織も訓練の重要性を再認識しており、13年前の震災と能登半島地震の教訓を重ね合わせて備えの強化を目指す。ただ、地域に根差した自主防災組織はメンバーの高齢化が進んでおり、担い手の確保が大きな課題として浮上している。

 「公助は最後。やはり発災直後は自助と共助だ」。三沢市の三川目自主防災会の木村和彦会長(59)は、自ら身を守ることの大切さをこう語る。

 三川目地区では震災で住民1人が犠牲になった。以来、地震が発生した3月ごろに研修会を開催。昨年は拡張現実技術を使ったアプリを活用し、浸水状況を疑似的に体験してもらうなど、いち早く高台へ逃げる重要性について周知を図るとともに、震災の記憶を風化させない活動を続ける。

 今月3日には、能登半島地震で建物やブロック塀の倒壊が相次いだ問題を取り入れて行い、参加者が地図を広げて避難経路や危険箇所などを協議した。木村会長は「防災は『自分ごと』として考えなければ駄目。当たり前のことだが、住民の意識が高まらなければならない」と強調し、今後も訓練を継続する考えだ。

 一方、自主防災組織が直面している課題がメンバーの高齢化だ。八戸市の白銀地区自主防災会もその一つ。同会は10年に結成され、震災時は避難所の白銀公民館にメンバーが集まり、避難者の迅速な受け入れに貢献した。

 ただ、結成時は60~70代だったメンバーも、顔触れが大きく変わらないまま13年が経過した。現在も精力的に活動しているが、松本征勝会長(79)は「10年後も同じことができているとは思えない。市内はどこの組織も悩んでいる課題だと思う」と打ち明ける。

 組織の基盤である町内会自体も加入者が減り、プライバシー問題などで世帯状況の把握すら難しくなっているのが現状。「若い人がどうすれば参加してくれるのか。自主防災組織だけでなく、地域の在り方を考えなければならない」と訴える。

 同会では6月に、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震想定による津波避難訓練を行う予定だ。今回は社会人だけでなく、初めて児童生徒の参加も呼びかけている。「中高生の力は災害時に大きな頼りになると聞いている。参加してもらうことで、自分たちにも何ができるか考えてほしい」と大浦廣副会長(75)。地域防災に若い力を取り込む一歩としたい考えだ。

【写真説明】

拡張現実技術で浸水した様子をタブレット画面で確認する住民。北奥羽地方の自主防災組織は震災の教訓を胸に活動を続けている=2023年3月、三沢市三川目地区

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