【震災13年・備える】生活インフラ「早期の機能回復重要」/北奥羽の事業者

【震災13年・備える】生活インフラ「早期の機能回復重要」/北奥羽の事業者

最大震度7の強い揺れが襲った能登半島地震で、市民生活を支えるインフラは甚大な被害を受けた。石川県では最大11万戸で断水が発生し、輪島市など6市町は下水管の52%で汚水を流す機能を失った。広範囲に及ぶ地盤の液状化や家屋倒壊、道路網の寸断などが復旧に影響。生活の立て直しへ、インフラの重要性を再認識させられた。「耐震化や日頃の準備を進め、被災した場合でも早期の機能回復が重要だ」。北奥羽地方の事業者は、過去の教訓を生かして災害に備える。

 「基幹的な水道管の耐震管率は72・9%(2021年度末)。北海道と東北にある規模の大きい事業主体では最も高い」

 耐震化の進捗(しんちょく)状況を説明するのは、八戸市など7市町で構成する八戸圏域水道企業団の担当者。基幹管路の総延長に占める耐震管の割合は、全国平均27・4%を大きく上回る。

 企業団の水道管路は、1968年の十勝沖地震で壊滅的な被害を受けたのを契機とし、全国に先駆けて耐震管を導入。東日本大震災の際でも深刻な被害が発生しなかった。「医療機関や避難所など、重要給水施設の管路の耐震化を継続的に進めたい」との考えを示す。

 八戸市は下水道の重要幹線の耐震化率も93・7%(22年度末)と、全国平均56%よりも高い。市内の下水道整備が遅れたため、新設工事の段階から耐震化が行われているのが理由だ。

 地中深くに張り巡らされている下水道の管路。被害が生じれば状況の把握が難しく、完全復旧まで時間を要する。能登半島地震では液状化しやすいエリアを中心に、広範囲で管路が損傷した。

 市下水道施設課は「管路が正常でも、処理場が使えなくなると意味がない。処理場の機能維持も重要だ」と強調。22年度に下水を処理する東部終末処理場に水処理施設を増設した。津波被害対策では、処理場の電気室や機械室を2階以上に設置するなど電源の維持に努める。

 災害時には大規模な停電も発生する恐れがある。電気が使用できなくなると、家庭や事業所の機能が低下するため、迅速な解消が望まれる。

 能登半島地震では、北陸電力管内で停電が最大4万戸で発生。東北電力ネットワーク青森電力センター配電テクノセンターの新山栄一課長(56)=東北町出身=は、1月22~26日の日程で被災地の応援に入った。

 道路状況も悪く、宿泊先から現場までの時間は通常の2倍もかかった。「水道も止まっており、せめて明かりだけでもともそう、との思いで仕事をした」。住宅への送電を1軒ずつ再開して回った。

 停電は早期復旧が困難な一部地域を除き、1月末までにおおむね解消。新山課長は「日頃の訓練は大規模災害の対応にも生きる。普段の蓄積もあり、どんな現場に行っても大丈夫という気持ちで臨む」と自信を見せた。

【写真説明】

耐震化が進む導水管の工事。災害時は生活インフラの早期復旧が重要だ(八戸圏域水道企業団提供)
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