被災者の避難所生活に欠かせない災害備蓄。デーリー東北新聞社が青森、岩手両県の沿岸13市町村を対象に調査を行ったところ、多くの自治体で備蓄量の「不足」を認識しており、各家庭での備蓄の必要性を強調した。備蓄整備費の捻出など課題も浮かんだ。
調査では、食料や飲料水、毛布、トイレといった最低限必要とされる物資のほか、使用者が限られるものの、多様な課題解決に必要なおむつ類、粉ミルクの計7種類の物資について保管量を聞いた。また、数量への評価や能登半島地震を経た問題意識の変化、課題についても回答を得た。
備蓄品を見ると、食料、飲料水は全13市町村が一定数を確保しているものの、県が定める目標値に対して「不足している」との認識がほとんど。おむつはサイズ別、ミルクも粉と液体、アレルギー用などを確保する自治体もあれば、全く備えがない―との回答もあり、ばらつきが見えた。
冬季の避難所生活では、低体温症など寒さを起因とした「災害関連死」の危険も高まる。「寒さ対策は検証が必要」(おいらせ町)、「冬の被災を念頭に整備を続ける」(八戸市)との意見があった。
不衛生な状態が続くと、感染症の温床となり得るトイレ問題。各市町村は簡易式、携帯式などで整備を進めているが「トイレットペーパーなどの消耗品についても検討したい」(六ケ所村)とする自治体も。新年度予算にトイレカー配備事業を盛り込んだ八戸市の例もあり、今後優先順位が高まる可能性がある。
発災日によっては、地域住民以上の避難者が出る場合も。県内有数の温泉地・下風呂温泉郷がある風間浦村は「観光客の分も視野に入れて整備を進めたい」とする。
今後も各自治体は目標値に向けて備蓄量の維持・増加を進める見通し。ただ、備蓄整備費は市町村負担となることから「捻出に苦慮している」(洋野町)、「補助金制度などで国や県の積極的な支援をいただきたい」(階上町)との声もあった。
多くの自治体が連携協定を結ぶ民間企業や他圏域からの調達、自主防災組織との協力で不足分を補う方針。久慈市は「住民の自助にも期待したい」と述べた。
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